雲呑を背にして  

~ボードゲームを徒然に~

「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズの魅力を今更ながら紹介&考察!(少しネタバレあり)

こんにちは、雲呑堂です。

皆さんは普段、ホラー映画を観ていらっしゃいますでしょうか。

 

私は割とホラー映画が好きなのですが、普段は海外作品を見ることが多いです。

先日ブログ記事を書いたジェーン・ドゥの解剖をはじめ、ゾンビ映画も見ますし、「フレディvsジェイソン」の様な少しテンション高めの作品まで、わりと雑多に見ています。

wanntan.hatenablog.com

 

一方で、日本のホラー映画については「リング」や「呪怨」のような有名作しか見たことがありません。ましてや、映画ではなくオリジナルビデオシリーズとなると、殆ど見たことがないと言っても過言ではありませんでした。

 

そんな中、ホラー好きの友人たちに何度も薦められ、その魅力を漏れ聞いていたオリジナルビデオシリーズがあります。それが、今日紹介する

戦慄怪奇ファイル コワすぎ!です。

 

www.youtube.com

監督:白石 晃士

(他作品:「貞子vs伽椰子」「オカルト」「ノロイ」等」

 

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一作目のDVDパッケージ。ここだけ見ると結構怖い。

 

①コワすぎ!シリーズの概要

 

この作品は、白石 晃士監督が低予算で始めた「フェイク・ドキュメンタリー」(「モキュメンタリー」とも呼ばれる)のシリーズです。

 

視聴者から投稿されてきた映像をもとに、内容を検証し、投稿者の証言や現地での調査から、少しづつ怪異に近づいていく・・・という話がメインになっていて、視聴者は、「映画」として見るのではなく、ドキュメンタリー映像のように、この映像を撮影している3人のキャラクターを通じて、「実際にあった出来事を撮影した」という形で作品と向き合うことになります。

 

現在ではオリジナルシリーズが4作品、「劇場版」が3作品、「超コワすぎ!」と名前を変えた新シリーズが2作品あります。過去にはニコ生での一挙放送特番が組まれるなど、低予算ながら、かなりの人気シリーズと言えるでしょう。

 

現在は「OSORE ZONE(オソレゾーン)」という配信サイトで、シリーズが全て配信されています。2週間の無料体験で全て見れると思いますので、興味のある方はぜひ。

(私は近所のTSUTAYAでレンタルしました)

 

osorezone.com

 

②コワすぎ!を彩る魅力的なキャラクター

 

コワすぎ!の魅力は一言では中々言い表せませんが、私に薦めてきた友人たちが口をそろえて言うのは、「ディレクターの工藤がヤバい!」でした。全作品見た私も今では胸を張って言えます。「ディレクターの工藤は間違いなくヤバい」です。

 

この作品におけるメインキャラクターは三人いますが、それぞれの人物が特徴的で怪しげな魅力を放っています。順に紹介します。

 

1.ディレクターの工藤 仁

originalnews.nico

 

上のインタビューで紹介されている方です。

なんといっても特徴はその暴力でしょう。ディレクターという作品をまとめる立場にありながら、「作品を作るためには何でもする」という明らかにヤバい人です。「コワすぎ!」というシリーズにおいては、最終的に怪異と対面し、対決するシーンが数多くありますが、工藤Dは金属バット片手に相手を恫喝し、(相手の強大さにビビったりもしながら)最終的にはハラを決め、臆することなく立ち向かいます。

 

この暴力、恫喝は撮影に協力的でない一般人(と撮影スタッフ)にも振るわれるため、概して横暴で、利己的な人間、という描かれ方をしていますが、気付くと作品に対して猪突猛進な、工藤Dの暴力を心待ちにしている自分がいることに気づくでしょう。

 

ホラー映画の一般人というのは、巻き込まれただけの被害者、という描かれ方が比較的多いのですが、一般人でありながら自ら怪異に対して首を突っ込み、「この映像は売れるぞ~」とか言いながら撮影を敢行し、金属バットと怪しげな呪術道具でどうにか奮闘する・・・。ホラー映画のニューヒーローと言えるんじゃないでしょうか。

 

とはいえ、工藤Dの魅力は暴力だけではありません。複雑な過去があったり、他の撮影スタッフに素直に感謝したり、協力者と共闘したり・・・決して褒められるべきタイプの人種ではありませんが、こういった「人間臭さとアツさ」が垣間見えるところも、大きな魅力の一つとなっています。

 

2.アシスタントの市川 実穂

 

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市川 実穂公式twitterより。言うまでもないが画像左の方。

twitter.com

 

純朴な感じが光る、女性スタッフです。工藤Dの横暴さを慣れた感じで諫めつつ、めちゃめちゃな展開に振り回されながらも、けなげに頑張る姿がとってもキュート。シリーズを追うごとにたくましくなっていく姿も見ものです。

 

ビデオ投稿者との橋渡しも市川さんの大事な仕事なので、依頼人とのやり取りや、現場検証などではまず体を張る係として任命されてしまいます。(少人数の撮影スタッフで映像を取っているという設定上、仕方ないのですが)

 

市川さんがキャラクターとして魅力的なのは、「工藤Dの横暴に振り回されながらも、きちんと怒るところは怒るし、意見するときはハッキリ言う」という点でしょう。現実をはるかに超越した怪異や、どこか頭のネジが飛んでる工藤Dに対して、一般人目線、ひいては「コワすぎ!」を見ている我々の目線に立ってきちんと意見してくれる一服の清涼剤として、貴重な存在です。倫理観が何かと崩壊しがちな「コワすぎ!」において、こうした存在を置くことは、このシリーズのバランス感に一役買っています。

 

とはいえ、曲がりなりにも「コワすぎ!」の撮影スタッフとして、肝が据わっているのは工藤Dと同様。気付いたら工藤Dよりも市川さんがキレた行動を起こすこともあったりして、時に視聴者をビビらせます。

 

3.カメラマンの田代 正嗣

 

彼はカメラマンなのであまり映像には出てきませんが、間違いなく撮影スタッフの一人として、メインメンバーです。何か衝撃映像があると、工藤Dによく「今の、撮れた?」と聞かれています。震え声で、「と、撮れました」と答えるのもお約束。

 

演じるのは白石 晃士監督ご本人。上画像右のハンチング帽の方です。「コワすぎ!」シリーズは基本的にPOV(Point Of View、主観映像)なので、監督が撮った映像がそのまま流れている、ということになります。

 

彼が主に活躍するのは、劇場版です。詳しくはネタバレになるので伏せておきますが、彼が「コワすぎ!」にかける思いと、その映像撮影への熱意を感じる事となります。この辺りは、白石監督が「白石くん」として出演する映画「オカルト」と合わせて視聴していただけると面白さが倍増すると思います。

 

③都市伝説や怪異を新解釈したストーリー。点と線が繋がっていく気持ちよさ。

 

「コワすぎ!」において撮影スタッフが相手取るのは、ちょっとした心霊体験やビックリ映像のレベルを遥かに超えています。今日は簡単に、オリジナルビデオ版(最初の4話)だけ、各話タイトルと見どころを振り返ってみましょう。

 

「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」

 

 FILE-01 【口裂け女捕獲作戦】

 

 

記念すべき1作目はなんと口裂け女捕獲作戦」口裂け女のルーツは1970年代末と言われており、そこから現代に至るまで散々語られてきた都市伝説です。「コワすぎ!」は2012年から始まっているタイトルなので、初めて「コワすぎ!」を見る方は、「今更口裂け女…?」と思わずにはいられないでしょう。

 

ですが、そこは流石の白石監督。きちんと恐怖感をあおりながらも、動画投稿者と一緒に現場検証を重ねることで、「現代に現れた口裂け女」のルーツに迫っていきます。また、タイトルにもある口裂け女捕獲作戦」には嘘偽りはありません。工藤Dが暴力で口裂け女に立ち向かっていく様は、ただ追いかけられたり、一方的にやられるだけの作品にはない、勢いと爽快感を感じるんじゃないでしょうか。

 

FILE-02 【震える幽霊】

 

 

2作目は正統派な幽霊モノ。少し落ち着いた感がありますが、実はこの幽霊には秘密があり…と、やはり一筋縄ではいきません。あんまり書くとネタバレになるので伏せますが、幽霊モノと言いつつ話が幽霊に止まらないのがコワすぎ!流です。ファンの中で語り継がれる「実験だよ!実験!」のシーンや、除霊(物理)など、見どころも多いですね。

 

このあたりから、シリーズの根底にある世界観や、キャラクター一人一人にもスポットが当たるようになってきます。シリーズ通してみる場合は、とても大事な回です。

 

 FILE-03 【人喰い河童伝説】

 

 

3作目は工藤Dvsカッパという奇跡の映像が描かれます。今更カッパをどう描くんだよ…と思わされますが、畑荒らしにあった被害跡を分析したり、行方不明者が多発する沼について聞き込みを行ったりと、地に足のついた形で取材をしていきます。怪異がちゃんと現実に存在している、コワすぎ!の世界観をよく表していますね。

 

一方で、少年マンガのような友情バトルが描かれるのもFILE-03の特徴。思わず手に力が入ってしまう展開、コワすぎ!メンバー以外の人物の顛末なども見どころです。見逃さないようにしましょう。

 

FILE-04 【真相!トイレの花子さん

 

 

4作目はトイレの花子さん。しかしながら、真相!とあるように、こちらもただのトイレの花子さんではなく、新解釈+新要素が打ち出されています。一言で言うなら「タイムスリップ」(ネタバレの為伏字) これには私もビックリしました。

 

私はこの4作目がとても好きで、ホラー要素をきちんと押さえながらも、未来に向かっていくような明るさがある作品として、何度も見返したくなる魅力がありました。「コワすぎ!」スタッフが魅力的なのは相変わらずですが、依頼人の少女たちや、初登場となる霊能力者「真壁 栞」さんにも要注目。ノーカット(で撮影されているように見える)映像もかなりチャレンジングで、臨場感がすごいです。

 

以上、4作のあとは、劇場版3作超コワすぎ!2作へと続きます。超コワすぎ!はまた世界観が一新されますが、この辺りはぜひ自分の目でご覧になってください。

 

④こんな人にお勧めしたい!&まとめ

 

ある意味では、使い古されたともいえる都市伝説や、怪異を新解釈し、新たな解釈を加えつつ、シリーズの裏にある壮大なストーリーが展開していく。低予算と言うこともあり、映像はチープな部分も多いですが、それを有り余ってあるキャラクターとストーリーの魅力が「コワすぎ!」をシリーズ物として成り立たせている大きな要素だと思います。

 

一応、最後に断っておくと、この「コワすぎ!」シリーズはホラー作品です。(今更ですが・・・)ちゃんと恐怖をあおるシーンや、ビックリさせるようなシーンもきちんとあります。しかしながら、ホラーがニガテ、というだけで敬遠してしまうのは勿体なさすぎる作品です。実際、思わず笑ってしまうようなシーンや、爽快感すら感じるシーンも数多くあり、その辺りが「コワすぎ!」が根強い人気を得ている要因なのかな、と思います。 

 

私自身、こんなに楽しんでホラービデオのシリーズを鑑賞したのは初めてでした。名前は聞いていたけれども見たことがないよ、という方、勢いのあるホラー作品が好きだ、という方はぜひ見てほしい作品です。映像のチープさを笑い飛ばせる方なら、こんなに素敵な娯楽作品はありませんよ!

 

それでは、長くなりましたのでこんなところで。

また、劇場版についても書けたら良いですね。

雲呑堂でした。

 

コワすぎ!史上最恐の劇場版

コワすぎ!史上最恐の劇場版

  • 発売日: 2016/08/03
  • メディア: Prime Video