雲呑を背にして  

~ボードゲームを徒然に~

ブラックパン屋さんでキリキリ働け!「まじかる☆ベーカリー」をより楽しく遊ぶ方法について!

こんにちは、雲呑堂です。

 

突然ですが、皆様は、魔法少女と言えばどんなイメージをお持ちですか?

可愛くて、キラキラしてて、夢と希望に満ち溢れている・・・

そんな世界を想像する方も多いのではないでしょうか。

 

今日は、そんなイメージを社会のドロドロ世知辛さで崩していくボードゲーム

「まじかる☆ベーカリー」シリーズから、初作品でもある初代「まじかる☆ベーカリー」についてご紹介します。

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見習い魔法少女のコロネが働くのは、ちょっとブラックなパン屋。パン焼きに1回失敗したら激怒され、2回失敗するとクビになる!? おそろしく難しいパン焼きに、次々と早退していく同僚たち。パンを焼くべきか、逃げるべきか。戦略と交渉のパン焼き早退チキンレース!(株式会社MAGI様ホームページより)

 
ルール説明も勿論ありますが、より楽しく遊ぶための方法についてもご紹介しますので、ゲームを知っている人も、知らない人も必見です!

 

magical-bakery.com

 

制作:株式会社MAGI

ゲームデザイン:イノモトショータ

イラストレーション:ぬるぴょ

ゲームメカニクス:ダイスロール、チキンレース

プレイ人数:2人~4人

プレイ時間:30分


①ゲームの目的

このゲームの目的は、パンをたくさん焼き上げ、目標点まで得点を得る事です。

パンにはそれぞれ得点があり、焼き上げるためには指定された条件のダイスの目を出さなくてはいけません。

フランスパンは1点。
シュトレンは3点。
目標のパンの例。フランスパンは1点、シュトレンは3点。

さて、この画像を見て、「・・・ん?」と思った方は正しいです。

「パンを焼くための条件、厳しすぎないか?」と・・・。 *1

 

ただやみくもにサイコロを振っても、クリアできる可能性は低いでしょう。

しかしながら、ゲームをプレイするあなたは魔法少女

サイコロの目を操る個性的な魔法によって、パンを完成に近づけることができます。

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魔法の例。全部で8種類あります。

こうして、一枚一枚のパンを完成させ、得点を獲得するのが、ゲームの目的です。

魔法を使ってもパンを焼けなかった場合は、他のプレイヤーに協力をお願いすることもできます。(後述)

 

みんなで楽しくパンを焼いていきましょう!と言いたいところですが、

残念ながら、このゲームはそんなに甘くはありません。

ゲームの進行を見ていきましょう。

 

②ゲームの進行

 このゲームはラウンド制で、1ラウンドは「仕込みフェイズ」「焼き上げフェイズ」に分かれています。下画像は、開始前のイメージ図です。

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配置イメージ。ここにカードを追加していきます。

まずはこのように魔法を8種類すべて並べ、その下にパンの山札を置きます。

下の空間はこねたパンを並べる「オーブン」のスペースです。

これで準備は完了です。

 

「仕込みフェイズ」について。

一番最近にパンを食べた方が親となり(ジャンケンでも可)、親から順に時計回りで、自分の手番を行います。まず行う「仕込みフェイズ」では、以下の3つの行動のうち、どれか一つを行うことができます。

 

①パン生地をこねる

山札からパンカードを引き、引いたプレイヤーだけが確認した後、

裏向きにしてオーブンに置きます。

 

②魔法のメモを隠す

引いたパンカードと一緒に、魔法の書かれた8種類のメモのうち一つを隠します。

隠したメモカードは後ほどの「焼き上げフェイズ」で使用が出来ません。

 

③早退する

「こんなバイトはもうやってらんない!帰る!」という魔法少女らしからぬ精神で早退します。早退した場合、このラウンド中の手番はそれ以降回ってきません。供託金である1ポイントを出す必要があります。

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オーブンに並んだパンと、隠された魔法のメモの例。ここから焼き上げに移ります。

 

「焼き上げフェイズ」について。

 

仕込みフェイズを順番に繰り返し、最後の一人以外全員が早退した時点で、焼き上げフェイズに移ります。焼き上げフェイズは、この最後に残ったプレイヤーだけが挑戦します。(もしも、山札のパンカードが尽きた場合は、最後のパンカードを引いたプレイヤーが挑戦します。)

 

焼き上げフェイズでは、オーブンにおかれたパンカードを1枚ずつめくり、ダイスを振ることで焼き上げていきます。ダイスがパンの焼き上げ条件を満たせなかった場合は、魔法を使うか、他プレイヤーに協力を願い出ましょう。

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パンを順番にめくり、ダイスで処理します。

真ん中に置かれているのは他プレイヤーが早退した際の供託金です。

魔法を使う場合は、隠されていない魔法ならば、焼き上げフェイズ中、1回まで使うことができます。使った魔法は使用したパンの下に配置すると分かりやすいです。

自分が置いたパン以外は、焼き上げるパンが何かはわからないため、「ここでこの魔法を使ってしまって大丈夫か・・・?」という脳内チキンレースが始まります。

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魔法の使用例。「マフィン」「コッペパン」のクリア条件を満たすため、それぞれ

「パンチ」と「プルーフ」の魔法を使っています。

 

一方、魔法ではなく他プレイヤーに協力をしてもらう場合は、他プレイヤーが代わりにダイスを振ることになります。クリア条件を満たせなかったダイスだけ振ってもらう、といったことも可能です。なお、代わりにダイスを振った他プレイヤーが失敗しても、リスクはありません。

代わりにダイスを振ってもらえるのは、焼き上げフェイズ中、一人1回まで。

お願いするタイミングは自由ですが、交渉の仕方も自由なため、大抵の場合、ポイントを支払ってお願いすることになります。

ポイントをたくさん持っているプレイヤーに対しては価格を釣り上げられたり、負けていれば逆に安く受けてもらえたり、という様々なパターンが考えられます。

 

また、他プレイヤーが協力するメリットがないと感じた場合は、協力を拒否することも出来ます。親切な誰かが、あなたの仕事を代わりにやってくれる保証はどこにもないのです。

 

「焼き上げ失敗」とペナルティについて

 

魔法を使い、また他プレイヤーにお願いをして、それでもオーブンのパンが全て焼けなかった場合は、残念ながら「焼き上げ失敗」です。

この場合、パン屋を取り仕切る「オヤカタ」にこってり絞られ、途中までパンが焼けていたとしても、得点にはなりません。さらに同じプレイヤーが2回パンを焼くのに失敗した場合は、残念ながら「クビ」となり、ゲームから脱落してしまいます。

魔法界のパン屋は甘くないのです。

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焼き上げ失敗の例。最難関「エッグベネディクト」は、魔法の「リッチ」「ミキサー」「オートリーズ」を全て用いても、太刀打ちできず。

 

得点の入手とクリア条件について

 

「焼き上げフェイズ」が成功に終われば焼けた分のパンの得点を入手し、失敗すればそのまま、また「仕込みフェイズ」に戻ります。

これを繰り返して、ラウンド終了時に、目標ポイントに達したプレイヤーが出るか、また一人以外全員「クビ」になったら、ゲーム終了です。

一人以外全員「クビ」の場合は、持っている得点に関わらず、残ったプレイヤーの勝利となります。

目標ポイントはプレイ人数によって異なり、2人プレイ・・・15ポイント

3人プレイ・・・18ポイント 4人プレイ・・・22ポイント となっています。

 

③ゲームのポイントについて

さて、以上のゲームルールを踏まえたうえで、戦略にも触れていきたいと思います。

といっても、実際にプレイすればわかってくることなので、ここは簡潔にします。

 

まず重要なのは、「撤退どころの見極め」でしょう。

魔法が隠されている数が多いのに、パンだけはたくさん並んでいる・・・

こうした状況は、パンを焼く条件の厳しさから、失敗に終わることが多いです。

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残り魔法4枚でパンを6個焼かなければいけない状況。かなり厳しい。

ただ、早々に撤退しても、供託金を支払うばかりでなかなか得点に結びつきません。

「これ以上はやばい」と感じても、他プレイヤーがまだパンをこね続けているようなら、自分も加担してクリアを難しくさせていくのも戦略の1つです。

(もちろん、周りが次々早退して、自分がパンを焼く羽目になる、という危険性は常に付きまといます)

 

また、「何の魔法を隠すか?」という点も、とても重要な要素だと思います。

全8種類の魔法には、強力なものから、ちょっと使いづらいものまで、様々です。

何のパンカードとセットにして魔法を隠したかは他プレイヤーにはわからないため、

自分が勝負するつもりのないラウンドならば、簡単なパンカードと強力な魔法をセットにして使えなくしてしまう、というのも面白いでしょう。

 

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最強魔法の1角、「スケッパー」と「オートリーズ」。他魔法との組み合わせで輝く。

逆に、強力な魔法があるから大丈夫・・と見せかけておいて、「エッグベネディクト」や「シュトレン」の様な難易度の高いパンを忍ばせておくのも、面白いですね。

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最高難易度「エッグベネディクト」。焼いた場合の点は高いが、難易度も最高峰。

もちろん、ダイスですから、絶対無理、というのはありません。

どんなに確立が低くても、最後は自分の運を信じて勝負してみるのも一興です。

 

④交渉について

最後に、交渉について書きたいと思います。

ダイスを他プレイヤーに代わりに振ってもらうこの「交渉」は、

ルール説明では簡単に書いてしまいましたが、とても奥が深く、このゲームの面白さの一端を担っていると言っても過言ではありません。

 

というのは、この「まじかる☆ベーカリー」には、上にも書いたように、

本当に「交渉の仕方に関するルールがない」のです。

決まっているのは、「焼き上げフェイズ」に各プレイヤー1回まで、という点のみ。

得点のやり取りについては、プレイヤーに一任されています。

 

そこで、単純なポイントの支払いによる交渉だけでない、交渉に取り入れると面白い要素についてご紹介します。ここで紹介するのはあくまで一例なので、皆さんも、ぜひご自分でお考えください。

 

1.ポイントの前払い、後払い制の導入

あと一回で脱落するなど、どうしてもパンを焼き上げなくてはいけない状況の時に、

他プレイヤーが代わりにダイスを振ることを渋ることがあります。

そこで、「失敗しても失敗しなくてもポイントをあげる」という前払い制を導入することで、少しでも振ってもらえる様に交渉します。

後払いはこの逆で、ポイントに余裕のあるプレイヤーが、「もし成功したら○ポイント払うから、やってみないか」と持ち掛けるような場合を指します。

 

この前払い、後払い制を導入すると、他プレイヤーからの「手伝おうか?」という言葉を引き出しやすくなり、ドラマが生まれやすくなります。

また、この合わせ技で、「前払いで○ポイント、かつ成功したら追加で△ポイントを渡す」というような、「仕事人」感のあるちょっと複雑な交渉を行うことも出来ます。

 

2.振るダイス数によりポイントを変える

まだ使える魔法が残っている場合、魔法は温存しておきたいから、他プレイヤーに先にダイスを振ってもらいたい、という状況は結構あります。他プレイヤーの運さえ良ければ、魔法を使わずともパンが焼けるからです。

そこで、振りなおすダイスの数に応じて、1つならば1ポイント、2つで2ポイント・・・という風に決めて交渉を行うと、話がスムーズに進みやすいです。

「魔法を使えばクリアできるダイス」についても、他プレイヤーに一度任せてみる、という選択肢が生まれてきます。

前払いでポイントをもらい、任されたうえで大失敗すれば、儲けものです。(信用は落ちますが)

 

3.オークション制の導入、「お得意さん」という特別扱い

これはシンプルに、「○ポイントで受けてくれる」という人が複数人いた場合、より安くしてくれる方を採用することを指します。これにより、焼き上げを待つ他プレイヤー間での競争意識を高めることができます。

また、あえて贔屓のプレイヤーを作り、「○○さんは毎回良い目を出してくれるから、ポイントを多めに渡すね」等、信頼関係を築くのも面白い要素です。

利害関係を一致させることで、上手に他プレイヤーを出し抜きましょう。

 

4.ポイント以外の要素での交渉

交渉に使える材料は、ポイントだけではありません。

例えば、「次に○○さんからダイスをお願いされた際は、必ず振るから、今回は無報酬で引き受けてくれないか」というようなパターンもあり得るわけです。

これについて、「成功したら?失敗したら?」等取り決めておくと、よりドラマが生まれやすいでしょう。

他にも、「次のラウンドでは、オートリーズの魔法は隠さないようにしてくれ」だとか、メタ的には、ゲームに関わる要素の全てが交渉手段になりえます。

もちろん、口約束ですから、破っても良い訳なのですが、ゲーム外の人間関係にも影響する可能性がありますので、おススメはできません。やる際は仲間うちだけにしましょう。(前科アリ)

 

このような交渉手段により、「まじかる☆ベーカリー」のポイントのやり取りは、何倍も面白いものになります。皆さんも、ぜひ取り入れてみてください。

 

⑤まとめ

ダイスを振る楽しみに、早退タイミングの見極め、プレイヤー間交渉など、色々な要素が絡み合って大変おすすめのゲームです。

 

自分ではないプレイヤーがパン焼きに挑戦している時も、飽きずに楽しむことができるのが、このゲームの良いところ。可愛らしいイラストブラックな設定もゲーム性にマッチしています。

 

「まじかる☆ベーカリー」シリーズはとても人気シリーズで、現在では関連作品が5作も出ています。リンクを貼っておきますので、気になった方は、そちらも是非手に取ってみてください。

magiinc.jp

 

それでは、長くなったのでこのあたりで。

雲呑堂でした。

 

*1:実際のところ、フランスパンはまだ可能性がありますが、シュトレンの方はかなり厳しい。3つのダイスを振って3つとも同じ目である確率は6/216、数字に直すと約2.7%です。