北欧映画 作品と監督と
こんにちは、雲呑堂です。
今回はボードゲームではなく、映画についての記事になります。
映画記事と言えば前回ホラー映画について書きましたが、今回は北欧映画についてです!
*前回
以下のトピックに分けて書いています。
(クリックするとそのトピックにジャンプします)
<①出会い>
そもそも私が最初に出会った北欧映画は「真夜中のゆりかご」という作品でした。
この映画は育児放棄に端を発する事件を通じて現代社会の問題を描いた、社会派ミステリーです。
人間の心の脆さと作品に漂う陰鬱さがとても印象的な映画でした。(褒めてます)
エンディングにいたるまで緩むシーンがなく、ほとんどずっと張り詰めた映画ですが、中盤以降の怒涛の展開からラストまで、非常に見ごたえがあります。
そして、「特捜部Q Pからのメッセージ」
この映画はデンマーク発人気ミステリー小説の映像化作品です。
・人種すら異なる正反対な2人の魅力
・社会テーマを取り込んだ巧みな脚本
・豊かな自然を生かしたと美しい画づくり
率直に言って衝撃的な映画でした。
今までは海外映画といえば、ハリウッド映画だった私でしたが、この作品をきっかけに北欧映画というものに注目するようになりました。
ハリウッド映画と比較すると、北欧映画は地味です。
アクションシーンも爆発も少ないし、何より感情表現が控えめです。
あと画面が暗いです。背景画面は美しいのですが、とにかく曇りばかりです。
実際、北欧の日照時間は日本とに比較しても短く、「冬季うつ」も問題になっています。
↓こんな試みもあるんだとか
そうした環境のせいでしょうか、北欧映画においては、老いや孤独、死への恐怖といったものが地に足のついたリアルな感情として描写されているように感じます。
その点も誇大表現が多いハリウッド映画との大きな違いだと思います。
私が見た中では以下の2作品にそうした描写が多かったですね。
・キッチンストーリー
「独身男性の台所での行動パターン調査」で町にやってきた調査員と村人の交流を描いたヒューマンドラマ。
調査員は動線の観察を旨とするため、対象となる独身者との交流を禁止されています。
部屋の隅に高いイスを設置して観察が基本です。
ただ、一日中同じ空間にいて、一言も交わさないというのは無理があります。
当然、ルールは破られ、調査員と対象者の交流が始まります。
老人達のハートフルな交流を楽しめる、寒い今の時期にぴったりな作品です。
ちなみにこの調査は実際にスウェーデンで行われていたそうですよ。
厳しい寒さと相反するような温かみのある交流が光ります。
・ハロルドが笑う その日まで
IKEAのせいで店の経営が圧迫された家具屋の店主がIKEAの創業者を誘拐しようとするコメディ。
誘拐計画は杜撰の一言。しかし、その行動が予期せぬ出来事を連鎖的に引き起こします。
この創業者誘拐計画は映画のとっかかりでしかなく、実際は誰しもが抱える孤独、家族の絆が中心となります。
ラストのハロルドが下した結論にはニヤッとしました。
人生ままなりませんねというお話。
作中のIKEA創業者が実際の創業者そのまんまで驚きました。
ゆるゆるな映画なので疲れた時に見るのにぴったり!!
<②北欧映画の監督たち>
続いて監督の紹介をば
・ラース・フォン・トリアー監督
北欧映画の監督と言えば恐らくラース・フォン・トリアー監督が一番有名ではないでしょうか。
「ダンサーインザダーク」や「メランコリア」を制作しており、ドグマ95の提唱でも有名な人物です。
ちなみにドグマ95とは
・撮影は全てロケーション撮影。
・手持ちカメラ必須
・35mmフィルムであること
・合成禁止
・・・・etc
といった10カ条からなる”純潔の誓い”です。
ちなみに全部を守らなければいけないわけではありません。
娯楽性の追求に走りすぎず、純粋な映画を作ろうというのが意図のようです。
(ハリウッド映画へのカウンターという意味もある気がします)
ラースフォントリアー監督ほどの知名度はありませんが、個人的には アンドレ・ウーヴレダル監督が一押しです。
代表作は「トロールハンター」「スケアリーストーリーズ 怖い本」です。
以前このブログでも紹介した「ジェーン・ドゥの解剖」の監督でもあります。
登場人物の心理描写を丁寧に描く傾向があります。
「トロールハンター」については、POVモキュメンタリー映画の中でも指折りの名作といえるクオリティでした。
簡単に説明すると、3人の学生がクマの密猟事件をきっかけに、トロールハンターのドキュメンタリーを撮影する話です。
トロールは北欧の伝承に残る妖精です。しかし、作中に登場するトロールは妖精というより、ゴブリンじみた外見の巨人です。最大サイズはなんと60メートル!!
キリスト教徒の匂いに敏感だったり設定もユニーク
The Troll Hunter - Official Trailer
出典:https://www.nytimes.com/2011/06/10/movies/trollhunter.html
*モキュメンタリー映画にありがちな、なかなか全体像を見せない怪物とは違い、序盤からばんばんトロールが登場します。
<③個人的おすすめ北欧映画>
色々と紹介してきましたが、一番のオススメはやはり特捜部Qシリーズです。
現在以下の映画が製作されています。(番号はシリーズの順番)
①檻の中の女
②キジ殺し
③Pからのメッセージ
④カルテ番号64
*「檻の中の女」以外はアマプラで無料視聴可能です。
タイトルである特捜部Qは、コペンハーゲン警察署にある未解決事件を専門とする部署のこと。ここに属するカールとアサドを中心として物語が進行します。
特捜部Qのメンバー
〇カール
ワーカーホリックな曲者刑事。捜査能力は優秀だが、コミュニケーション能力には乏しい。他人の感情を考慮しない物言いが度々非難されている。アサドの影響もあり、作品を追うごとに他人への配慮ができるようになってきた。
〇アサド
シリア系移民。カールとは正反対で、コミュニケーションに長けた理知的な人物。コーヒーを愛飲しているが、その味は・・・。
アサドが危険な目にあってカールがそれを助けるパターンが多い。つまり、ヒロインである。
〇ローセ
「キジ殺し」から合流した秘書的存在。「カルテ番号64」では災難に見舞われたりしますが、ガッツのある女性。カールの社会性の欠如っぷりには若干引き気味。
シリーズ通じて、社会問題を軸にしたシリアスな脚本が光ります。
ジャンルとしてはミステリーではありますが、殺人のトリックを解き明かすタイプではなく、事件の全容を暴いていくタイプです。(所謂ホワイダニット型)
また、美しい街並みや自然を背景の中で起こる事件はどれも陰湿!
犯人達は狂気的とも言える執念を持ち合わせています。
非常に重厚なミステリーですので、是非元気のあるときにご視聴をお勧めします(笑)
4作も続くシリーズになると往々にして駄作が生じがちですが、特捜部Qシリーズはどれも名作揃い。
しかし、最新作「カルテ番号64」は特に素晴らしい出来でした。
実際にデンマークで行われていた女性収容所での人権侵害をテーマにしています。移民問題も絡んでおり、重厚な社会テーマとなっています。
さらにカールとアサドの関係にも目が離せません。当初はあれだけ歪だった2人が最後には・・・
この作品は比較的室内での撮影が多めです。Pからのメッセージは大自然での撮影が多かったのですが、その真逆です。
室内に注目して見ると、やはりシンプルでお洒落なデザインが目につきます。
特にラストの舞台となる病院は赤と白のコントラストが綺麗です。
シリーズを通じて登場するコペンハーゲン警察署も円形の回廊と中庭が特徴的なデザインが光ります。
また、この作品では1人の女性が重要な役割を担います。彼女の過去、そして過酷な戦いに満ちた人生の結末は視聴者をくぎ付けにします。
あとは「シンプル・シモン」もオススメです!
アスペルガー症候群のシモンは物理とSFを愛する一方、人とのコミュニケーションは苦手な人物。兄は良き理解者ですが、シモンが原因で彼女にフラれてしまいます。
大好きな兄の完璧な彼女を探すべく奔走するシモンが巻き起こす騒動を描いたコメディ作品。
どんよりと暗い特捜部Qとことなり、こちらは明るくお洒落な空気の映画です。出てくる家の色彩や家具もやはり洒落ています。
シモン自身が気づかないうちに変化していく様は非常に愛らしく、視聴者の気分もほっこり。老若男女を問わずおすすめできる良作であります。
<④国ごとの特色>
続いて、私見に基づいた国ごと特徴の述べていこうと思います。
ただ、私の視聴本数がそもそも少ない国もありますし、監督に左右される面も大きいので、2か国のみ取り上げようと思います。
戯れ程度に見ていただければ幸いです。
ラース・フォン・トリアー監督や特捜部Qシリーズが示すとおり、重たい雰囲気の映画が多い印象です。緊迫感のある良質なサスペンス物が多いです。
近年では「THE GUILTY ギルティ」も話題になりました。
オペレーターを務める主人公が、一本の通報から巻き起こる事件に立ち向かう作品。室内に籠って、電話ごしから発せられる音を頼りに事件に迫る主人公を描いたサスペンス。「フォーンブース」等のワンシチュエーションサスペンスものらしく、短い上映時間(88分)できっちりまとまる良作であります。
デンマークでは、文科省の下にデンマーク映画協会(Danish Film Institute)が配置されています。国の管轄下で映画産業が行われているため、財政的な問題もクリアしやすいようです。また、売上の分析や映画産業に関する学習のサポート等も行っており、映画産業全体の成長に力を入れています。
日本でも、上述の「シンプル・シモン」や「ドラゴン・タトゥーの女」が有名かと思います。他にも「さよなら人類」といったシュールな作品や「ぼくのエリ」といった恋愛映画もそろっています。スウェーデン映画は色彩に特徴が感じられます。カラフルなのです。そのため、あまり陰鬱さは控え目。
近年ではルーカス・ムーディソンという監督が有名だそうです。(wiki曰く)
チェックしなきゃ・・・
ちなみに映画を観ているとスウェーデンとデンマークの仲が悪いことが良くわかります。キッチンストーリーでもそれが分かるシーンがあったような・・・
<⑤トーキョーノーザンライツフェスティバル >
東京で行われる北欧映画上映会「ノーザンライツフェスティバル」をご存じでしょうか。
年に一度行われており、2020年2月の上映を持って、何と10周年!!
(残念ながら2021は中止だそうです。おのれ、コロナ・・・)
トーキョーノーザンライツフェスティバル は1997年以来、東京で北欧映画祭という総合的な形での開催がなかったこと等を憂い、立ち上がったイベントです。
運営の方へのインタビューによると、100本を超える候補作から10数本を絞っているんだとか。
私自身参加したことがないので、コロナ収束のあかつきには是非参加したいと思います。
<⑥最後に>
ここまで長々と北欧映画について書いてきました。私はまだまだ視聴本数も少ないので、これからも北欧映画の沼にどっぷりとつかっていきたいと思います。
この記事を書いていく中で、いくつか気づいたこともありました。
・フィンランド系の映画を観ていない
・アクションものの北欧映画を観ていない
・1990年代以前の北欧映画を観ていない
このあたりは今後の課題として意識的に見ていきたいですね。
映画以外に、北欧ドラマももう少し観たいなぁ。。。。
「THE BRIDGE/ブリッジ」というスウェーデン産ドラマが大好きなのですが、それに続くヒット作がまだ発見できていません。「THE BRIDGE/ブリッジ」については、とても思い入れがあるので、またどこかで記事にするかもしれません。
日本映画、ハリウッド映画、韓流映画、インド映画等、お国柄は映画に反映されます。皆様はどの地域の映画がお好きでしょうか。
それでは
雲吞堂でした。